"試合に出してもらえない"保護者様からのご相談①

色々なご質問やご相談をいただく中で、「お子様の試合出場機会」に関するご相談はとても多いです。
今回は過去に全日本U-12サッカー選手権大会の後に、あるスクール生の保護者様からいただいた「お子様の試合出場機会」に関するご相談を公開します。


全日は一回戦で敗退しました。6年生と上手な5年生で臨み、試合に出られなかったのは6年生の息子一人でした。息子は大変ショックを受けていて、中学ではサッカー部には入らないと言っています。今のチームも辞めたいと言っています。スクールだけになると思いますが、あと数か月よろしくお願いします。

 
とても悲しい事実です。

まず、その選手は技術的には上手です。また、視野が広く多くの選択肢を持っています。そして、オフの時に気づける選手で、それがピッチでもいち早く危険なスペースを察知したり、予測して味方のフォローに動き出せる選手です。
しかし認知はできていても判断が悪くて、一部の選手へのパスを優先したり、シュートを打てる場面でも味方へのパスを選択してしまいがちです。一方、決断した難しいパスでも通してしまう技術があります。
守備面では予測してスペースをつぶしたり、インターセプトは得意です。しかし、球際はとても弱いです。一言で言うと気持ちに課題があります。

残念ながら、チームではミスを怒られることが多いのではないかと思います。自分がチャレンジするより上手な選手へ預ける方がいい、シュートを外して怒られるのが怖いからパスを選択する、ボールを奪いにいって抜かれて怒られるのが怖いから球際で強くいけない。

スクールではいいプレーを誉めて伸ばしています。そうすることでデュエルすることも身についてきています。以前は簡単に抜かれてしまっていたのが、体をぶつけてボールを奪いきったり、粘り強くついていくことができるようになってきていました。また、シュートを打つ機会も増えて、入らなくても周りからポジティブな声が出るので、またチャレンジできます。スクール内では"判断"の部分もかなり改善できています。



普段開催されているリーグ戦や各大会では、出場機会を与えられていない選手を見かけます。もしくは後半残り数分のみしか出場機会を与えてもらえない選手もいます。トーナメントの場合はさらに顕著に表れます。

チームを勝利に導きたい、選手たちに勝利の喜びを与えたい、という指導者様の気持ちは十分にわかります。目の前の試合で勝利を目指すのは当然です。勝利はサッカーの喜びであり、成功体験です。勝利を目指さないサッカーはありえません。
しかし、育成年代において"結果"が最も大切なことではないと考えています。


主役は選手です。指導者は選手を目的地へ導く役です。
選手は試合経験で最も成長します。試合では成功体験もするし、ミスやエラーもたくさんするものです。その経験を積みながら、修正やチャレンジを繰り返して成長していきます。
どの選手も試合を楽しみに会場に行っています。選手を試合に出さないというのは指導者が選手の成長する機会を奪うという本末転倒な行為です。保護者様も実力が足らないからなどとお子様を責めてはいけません。主役は選手です。

チームを勝利に導けないのは指導者の責任です。選手ができないのは指導者が教えることができていないからです。決して選手のせいではありません。
そして勝ったか負けたかは試し合いの単なる結果です。その試合で何にチャレンジするのかを共有して、そのチャレンジに対してどうだったかが評価基準です。